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2008年11月 5日 (水)

田母神論文を歴史論争の機会にしよう その1

 「日本は侵略国家であったのか」は、A4用紙で9枚の論文である。

 それほど長いものとは思わないが、それでも、興味のない人、全く勉強したことがない人が読むにはとっつきにくいかもしれない。

 とはいえ、実際には、極めて分かりやすい論文で、思わずぐいぐい引き込まれてしまった。

 書き出しが先ずいい。

 「アメリカ合衆国は日米安全保障条約により日本国内に駐留している。これをアメリカによる日本侵略とは言わない。」

 この書き出しは、なるほど、「政府見解」の通りではないか。田母神論文は、政府見解の通りである、と、この部分を見ればいえる。

 「二国間で合意された条約に基づいているからである。」

 実に論旨明快、誤解の余地はなく、政府として文句のつけようはなかろう。

 「我が国は戦前中国大陸や朝鮮半島を侵略したと言われるが、実は日本軍のこれらの国に対する駐留も条約に基づいたものであることは意外に知られていない。」

 さて、ここで考えて見て欲しい。日米安保条約による米軍の駐留が侵略でないなら、戦前、条約に基づいて大陸に日本軍が駐留していたことを指して侵略とは言えない、という類推くらいは、知能のある人ならば理解できるはずである。

 問題は、「日本軍のこれらの国(中国や朝鮮半島)に対する駐留も条約に基づいたものであること」が、「知られていない」という点である。

 単純に、中国になんで日本軍がいたんだ。いなければ戦争になんかならなかったんだ。だから侵略だ、という子供のような議論をする人が本当に実在する。ここは冷静に大人の議論をしなければならない。

 戦前、日本軍は、国家間の条約や協定に基づいて駐留していた、という「事実」を先ず確認することである。

 「日本は19世紀後半以降、朝鮮半島や中国大陸に軍を進めることになるが相手国の了解を得ないで一方的に軍を進めたことはない。」

 「現在の中国政府から「日本の侵略」を執拗に追求されるが、我が国は日清戦争、日露戦争などによって国際法上合法的に中国大陸に権益を得て、これを守るために条約等に基づいて軍を配置したのである。」

 「これに対し、圧力をかけて条約を無理矢理締結させたのだから条約そのものが無効だという人もいるが、昔も今も多少の圧力を伴わない条約など存在したことがない。」

 ここは、簡単に論を運びすぎているように思われるが、論文の性格上、これ以上スペースを割くことは出来ないだろう。ここまでが第一段落である。

 ここまでの問題を検証してみると、”条約や協定に基づいて外国に軍隊を駐留させることは侵略か否か”、とつづめることが出来るだろう。

 このことについて考えて見よう。現在においてもイラクやアフガニスタン、また国連のPKFなどはやや性格は違うものの、このフレーズの表現内に収まる。何れにせよ、「侵略」と言うことは出来ないだろう。

 日清・日露戦争がそもそも侵略戦争だった、という議論をする人も時たまある。侵略とは、強者が弱者に襲いかかること、というイメージがあるが、もしそれが間違いでないなら、日清・日露戦争を、日本の侵略戦争ということは出来ない。何れも朝鮮半島の安定が問題であり、それは日本の自衛と直結しており、尚且つ、日本が矛を交えたのは、清朝、ロシアという、何れも大国が相手であって、朝鮮と戦争したのではないからである。朝鮮半島の帰趨を巡る戦いであったが、清国やロシアにとっては宗主国の権益が目当てであっても、日本にとっては日本の独立が脅かされる事態であったのである。必死さも違った。李氏朝鮮を、清朝のくびきから解放したのが日清戦争であり、ロシアの侵略を跳ね除けたのが日露戦争であり、大韓帝国として史上初めて、中華帝国から独立した大韓帝国として独立を果たしたわけである。問題は、日本が死力を尽くして戦い取った韓国の独立が、再び危うくなることに日本が堪えられなかった、という事実だろう。日本は韓国を保護国化することになり、最終的に、「日韓併合」ということになる。これは、丁度、イギリスとアイルランドの関係に似ていなくもない。

 このことについては、4段落目に、満州などと括って簡単に述べている。

 「我が国は満州も朝鮮半島も台湾も日本本土と同じように開発しようとした。」

 このフレーズは、価値中立的であり、かつ、史実に基づいた的確な表現である。中国の近代化のモデルとしての満州の価値は再評価されるべきだ、とは自分の意見だが、朝鮮半島の近代化、台湾の近代化については、それぞれ評価する学者が、韓国、台湾、日本に存在し、それは的確な指摘だろう。李登輝氏も、台湾の近代化に果たした日本の役割を高く評価する一人であることは知られている。教育、インフラ、社会制度、産業、農業、どれをとっても、日本人は一生懸命にやったことは否定出来ない事実である。

 「当時列強といわれる国の中で植民地の内地化を図ろうとした国は日本のみである。」

 さて、この言葉の内容はどうだろうか。イギリスに取ってのインド、ビルマ、マレーシア、オランダにとってのインドネシア、フランスにとってのベトナム・インドシナ、何れも現地民を搾取するための草刈場でしかなかったことは史上に明らかである。何より、教育の状況を見ればその事情は明らかになろう。愚民化政策で、知力も気力も体力も奪われて、羊のように追い回されるだけの当時のアジア人の実態は、隠れようもない。

 日本はどうか。台湾で、韓国で何をしたか。今では色々な研究書や一般書が出ているので簡単に知ることが出来る。日本と同じように、初等教育から高等教育まで普及させ、識字率を高め、衛生観念を広めて社会整備を進めた。朝鮮半島から日本の帝国議会議員まで選出されている。これらのことは、具体的に詳述しているので後に譲りたい。

 「我が国は他国との比較で言えば極めて穏健な植民地統治をしたのである。」

 この言葉だけ唐突に聴かされ、上記のようなことや、これに続けて詳述している具体的な事実を知らなければ、あるいは、「正当化するのか」と息巻く向きもあるかもしれない。しかし、「他国との比較でいえば」とは、上記した、イギリス、フランス、オランダ、アメリカなどの植民地支配と比較すれば、ということであり、それに続けて「穏健」とするのは、的確な表現であるといえよう。

 具体的な事実を詳述しているが、ここが眼目かもしれない。4段落目から7段落目までが、このことの裏づけにあてられている。この検証は、論評しようとするものが避けてはならないところである。
 

 

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