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2008年10月24日 (金)

江田島での格闘訓練中の事故死について

 テレビを殆ど見ないので、新聞やネットで、それも斜め読み程度にしか読んでいないので、正確な情報を得て書いているわけではない。

 といって、テレビを見て、記事をしっかり読んだとして、それが「正確な情報」を得る所以なのかどうか。

 海上自衛隊が調査委員会を設置して中間報告を出したのが昨日。防衛省のHPにアップされているのを今確認した。

 新聞の見出しをはじめ、「集団暴行」という言葉が踊る。

 マスコミが特に自衛隊に関する事件においてセンセーショナルに報道するのはいつものことだから驚かないが、学校における「集団いじめ」や暴走族などによる「集団暴行」という、最初から犯罪の匂いを付加しての報道はおかしい、と思った。

 亡くなった三曹の方には、心からお悔やみを申し上げたい。この心持ちを前提として、以下感想を述べたい。

 この事故死は、海上自衛隊の特殊部隊「特別警備隊」の隊員を養成する第一術科学校の特別警備課程の中で9月9日に起った。

 25歳の隊員が1人で他の隊員15名を相手に連続して格闘するという「訓練」の中で、14人目の相手のパンチを受けて意識不明となり、9月25日に急性硬膜下出欠で死亡した。

 中間報告に記載された様々な点について、マスコミ各社は当然の如く批判を加えている。それはマスコミとしてやるべき仕事であると思う。しかし、その中身はいかがなものか。


 とっさに思ったのは、これは、もし普通の軍隊であれば、訓練中の事故死は、「名誉の戦死」に准ずるものだろう、ということである。

 軍隊の訓練が、命の危険を伴う厳しいものになることは、ある意味当然のことである。もちろん、可能な限り万全の配慮が必要なことは言うまでもないが、完全安心な訓練など、あるはずもない。また、ぬるい訓練しかなされなければ、いざという時、ぬるい行動しか取れず、それが結局1人ではなく多くの犠牲を出すという結果を招きかねないことは自明である。

 自衛官の、それも特殊部隊の隊員を志願し、その訓練を経てきた隊員が、別の課程に移る直前の訓練において、不幸にして命を落としてしまった。痛恨の出来事であろう。しかし、それは自覚からすれば日々覚悟を持って訓練に当たっていたはずである。安全管理の問題や判断ミスが指摘されているが、それらを考慮に入れても、「集団暴行」というのは余りにも故人を含めて、隊員全体を侮辱する言葉である。

 かつて、旧軍時代に、訓練にかこつけて、あるいは作戦行動の徒爾において、故意に普段気に入らないヤツを危地に追い込むまねをする不心得ものがいなかったとは言えない。そうしたことが「名誉の戦死」の「美名」の陰に隠されてしまったかも知れない。当時において、命の危険と隣り合わせは相身互いだったことを考えれば、そう易々と故意に不心得を侵すものがいたとも考えにくいのではあるが。

 海上自衛隊の第一術科学校は、海上自衛隊の要の一つであると思う。

 その日常の訓練の様子を垣間見たことがあるが、鍛え上げられた凛々しい若い隊員たちの姿は、感動的でさえあった。彼らが自らの人生において、現代の防人たらんと決意し、厳しい訓練を自ら進んで受け鍛えている様は、現在の学校教育のぬるま湯の中でぬくぬくとしてきたものからすれば、月とスッポンだと思わざるを得なかった。感謝の思いが自然に涌いてきたものだ。

 もちろん、彼らも同じ時代の空気を吸っているものとして、同時代の悪影響を受けていないとはいえないかもしれない。

 しかし、校舎の裏で、あるいは放課後の教室で、あるいは橋の下で、街の片隅で、因縁をつけられて集団的に弱いものいじめをされたのでも何でもない。

 完璧ではなかったかもしれないが、教官が付いての訓練の場で起きた事故だったのである。

 もしこれがきっかけで、ぬるい訓練になったら、あの、拉致や工作活動のために今でも日本に潜入していると思われる、人命などなんとも思っていないような訓練を受けてきた北朝鮮の特殊部隊をはじめ、隙あらば自国の国益のために、日本に様々な工作をしかけてくるであろう、あるいはしかけているであろう中国やロシア、韓国、アメリカをはじめとした工作員や特殊部隊から、どうやってこの日本の国を、国民を守ることが出来るというのか。

 自衛隊は軍隊ではない、という神学論でごまかすことは出来ない。

 彼は、日本のために、国民を守るための訓練の途上、不幸にも命を落とした。

 先ず捧げるべきは、感謝の念ではないのか。

 今、日本のマスコミは、国のために命を落とした方々への作法を全く失ってしまっている。

 せめて、市井の庶民の一人ではあるが、心から哀悼の誠を捧げ、自衛隊員としての彼の栄誉を讃えたいと思う。


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