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2006年11月 3日 (金)

未履修問題、政治決着だけでよいのか?

 全国の高校を震撼させた未履修問題は、受験を控えた高校3年生の事情が考慮され、急速な政治決着に向かおうとしている。しかし、この問題、救済措置が出来ればそれでよいということではない。実に全国の高等学校の一割が、卒業要件を満たさないカリキュラムを実行していたのである。受験対策がその大きな理由だというが、高校は受験予備校ではあるまい。しかし、そのようにしなければ「競争」に勝ち残れないというのか。どこかゆがんでいると思われてならない。高校の時、受験批判を口にしていたことがあるが、担任の教師は、先ず受験に受かってそれから批判をすればよい、と吐き棄てるように言った。それはそれで正論であり、受験は受からなければ始まらないことは間違いない。紆余曲折はあったものの大学へは入り、卒業もした。しかしやはり疑問はなくならない。何のための高校なのか。

 6・3・3制が戦後の教育改革の中でアメリカ教育使節団によって導入されて以来固定化した我が国の教育制度の枠組みであるが、教育基本法改正を成し遂げた暁には、この枠組み自体の見直しと再編がなされてしかるべきだろう。

 幕末維新史の中で、最後まで頑強に戦った会津藩の藩校日進館では、武士階級のみとはいえ21歳まで義務教育が課されていたという。教育の力、思うべしである。

 義務教育が6・3の9年で、現在もそのままであるが、高校がほぼ全入に近い現状からすれば、6・3・3の12年に延長しても良いのではないか。中等教育と初期の高等教育を一貫制にして、5年制中学とし、次いで現在の高校3年から大学2年までの3年間を教養教育を中心とする人間形成の期間として、そこから其々の専門課程に進むシステムに変えた方が余程合理的というものである。

 すると、旧制中学、旧制高校に近くなるのであるが、これはむしろ戦前の教育制度の方が余程人間形成の実態に合った合理的な教育システムだったということであって、戦前に返せなどと主張するがために言っているのではない。
 これだけ全国の殆どの地域で問題が発生していたということは、現在の6・3・3制度の限界が露呈したということが出来るだろう。

 基本の制度としては、初等教育5年、中等教育5年、教養課程3年、本科大学3年のような形にすべきではなかろうか。義務教育は中等教育までであるが、現在の高校2年までになる。

 このようにすれば中等教育段階でじっくりと教育に取り組むことが出来るだろう。3年で駆け足で過ぎ去ってしまうところを、じっくりと勉学に取り組み人間形成をすることが出来るのではないか。教師には生徒の懲戒権を確立し、教師は敬うべき存在であるとの意識を生徒にしっかりと持たせることが大切である。それには、「教師は労働者である」などという綱領を持つ団体は百害あって一利なしであり、必然的に日教組などは過去の負の遺産として清算されていくだろう。替わって教育研究団体なり教師としての志を高める団体が主流となって教師全体のレベルアップを促すことになればよい。
 教育行政システムもこれにそって抜本的な改革が迫られることになるだろう。現在殆ど形骸化している地教委は廃止し、都道府県教育委員会を大幅改組して義務教育を見ることにする。高等教育は国が直接責任を負う。
 教員養成システムにも抜本的な改革を加え、大学の教育学部も解体的な改革を進めなければならない。かつての師範学校的な教員養成のための専門教育システムの構築が必要である。

 教育基本法改正の次に来る教育改革は更にこのように進むべきではなかろうか。

 「未履修 全高校の一割に」【産経11月2日】記事

 高校必須科目の未履修問題で文部科学省は1日、全国の国公私立5408校の緊急調査をほぼ終えた。私立2校のみ調査が未了だが、全体の約1割にあたる540校で未履修が発覚し、現状では卒業できない恐れのある生徒数は8万3743人にのぼった。割合では私立は公立の倍となった。

 また、文科省の緊急調査で289校となっていた公立の未履修校は、さらに25校発覚。総数は314校に膨らんだ。
 文科省によると、私立は調査を終えた1346校のうち16.8%の226校で未履修。公立は4045校のうち7.8%の314校で未履修が判明した。
 私・公立を合わせた履修不足の内訳は、70時間以内が6万1352人(73.3%)▽70時間超で140時間以内が1万7837人(21.3%)▽140時間超が4554人(5.4%)となっている。

 地理歴史で必修の「世界史」を履修させなかったケースが多く、「家庭」「保健」「情報」などの未履修校も多かった。

「未履修補習 実質50時間で合意 与党協議 大幅不足も例外認定」【産経新聞11月2日】記事

 全国の高校で必修科目の未履修が発覚した問題で、政府は1日、与党協議で、大半の履修不足の生徒について、上限70時間の補習を条件に卒業を認める救済案で原則合意した。ただ、与党側からさらに補習時間削減を要請され、弾力的な運用を認める方向でさらに文部科学省で検討する。学校の裁量により、補習70時間のうち50時間の出席で卒業できるようにする見通し。350時間など大幅な授業不足を抱えた高校生も、行政事件訴訟法に基づく例外的な取り扱いで卒業を認定する。2日に通知し公表する。

 伊吹文明文部科学大臣は1日の衆議院教育基本法特別委員会で、「受験前の全生徒が被害者だ。木曜日(2日)にはこういう基準でやれば卒業できるという通知を出す」と明言した。
 文科省によると、履修不足の時間数は70時間以内の生徒が約6万人と最も多い。一方で「指導要領通りに履修していた生徒とのバランスが必要だ」(伊吹文科相)との認識から、70時間を上限とする補習による救済案を検討していた。

 補習だけで卒業要件を満たせない生徒には、リポート提出や単位数を削減できる「減単制度」や「世界史B」(4単位=140時間)を近現代史中心の「世界史A」(2単位=70時間)に振り返る措置を講じる。それでも満たせない生徒や未履修のまま卒業した既卒者には、行政事件訴訟法の「事情採決」と呼ばれる例外的な規定を適用し救済を図る方針。

 事情採決は、行政判断自体が違法でも、それを取り消せば公益に著しい障害が生じる場合は、取り消さなくてよいという考え方。適用には①リポート提出を求めるなど最大限の対策を講じる②卒業認定しないことが公共の福祉に反しており、認定が本来は違法と明確にする③前例としない―などが条件となる見込み。

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