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2006年11月 7日 (火)

いじめ自殺予告を文科大臣に送つた子へ

 君が文部科学大臣に宛てて送つた手紙が公表されてインターネット上で拝見することができましたので一読いたしました。しつかりした文面から見て、男の子の中学生で、しかも極めて頭の良い子だと思ひました。いじめ自殺が続発し、大変な社会問題になつてゐる今、君が文部科学大臣に手紙を送り、いじめをしている同級生や、見てみぬふりをする教師や学校、教育委員会に対して痛烈な逆襲をしやうとしていること、実にインパクトのあるやり方であると思ひます。また、君が如何にお父さんお母さんを愛してゐるかも、もういちどお父さんとお母さんの子として生まれたいといつてゐることからもよく伺えます。兄弟や姉妹はいるのですか?一人つ子なのかも知れませんね。

 あまりにもひどいいじめを繰り返す同級生を心底恨んでいること、まともに取り合つてくれない教師や学校、教育委員会に対して憤つてゐること、文面を通して伝はつてきます。そしてそれはきつと本当のことなのでせう。君が指摘するように本当のことが隠されて無駄に死ぬのではなく、復讐につながるやうに手を打つなど憤りの中にも冷静な計算ができる頭のよさを感じさせられます。しかし果たして君が計算したとおりになるのだろうか。君も予想しているやうに、誰一人責任を取つて自殺するような人はないででせう。もしそのやうな気概がある人々ならはじめからいじめなどしないでせう。君も予想しているやうに、時間が経過すれば風化して嫌な思ひ出として封じ込められることでせう。しかし、君が一番愛してゐるご両親だけは、いつまでも君の事を忘れずに悲しい人生を送ることになるのではないでせうか。恨み、悲しみ、憤りにまみれて。

 君は、本当は思いやりのある人なのだと思ひます。だからご両親をそのやうな目に遭わせることに気づけば、必ず理解して考え直すことができると思ひます。人は一人一人神様から与えられた使命があります。それを果たすことなく途中で命を断つといふのは決して褒められた話ではありません。どんなに厳しい試練をも乗り越へて立派に生き抜いた人々は歴史の上に沢山居ます。「愚者は体験から学び、賢者は歴史から学ぶ」といふ言葉をご存知でせうか。今の現実がどんなに厳しく感じられやうとも、それを試練であると受け止めるやうに自分の心持ちを変へれば、必ず乗り越へて行けるはずです。同級生や教師や学校や教育委員会が悪いのは本当でせう。しかし、それは君の責任ではありません。君が責任を取らなければならないのは君自身の人生についてではありませんか?他の人々はそれぞれ自分の課題を抱へて生きています。それは彼ら自身の課題であり責任です。君が彼等にそれを気づかせてやるのが自分の役割だと思ふのであれば何もいふことはありません。

 しかし、君には責任があります。ご両親に対して、自分自身に対して。それを全ふすることが、君自身の責任ではないでせうか。それは、今、死を選ぶことなのでせうか。そうではない、と私は思ひます。もし同級生や教師が許せないといふのであれば、一生懸命に勉強して10年20年後に見返してやればよいではないですか。学校や教育委員会が悪いといふであれば、更に一生懸命勉強して、そのやうな悪い教育システム自体を改革するやうな仕事ができるだけの人物になれば良いではないでせうか。そちらの方が、今、死を選ぶよりも遥かに厳しい道ではないかと思ひます。

 今から百五十年前の幕末といふ時代、吉田松陰といふ人物がいました。松陰は三十歳で幕府に囚われて刑死するのですが、それまでに懸命に学問をして、日本が滅ばされないやうに真剣に考え、行動し、松下村塾といふ塾で多くの弟子たちを育てました。その弟子たちが、明治維新をなしとげて、日本は滅ぼされずに近代国家として発展することができたのです。
 その吉田松陰が、幕府に囚はれて江戸へ護送され、これが両親への最後の手紙といふ中に、次の和歌をしたためました。

 親思ふ こころに勝る 親こころ 今日のおとづれ 何と聞くらん

 自分が親を思つてゐる以上に自分のことを思つてくれている両親よ、自分が囚われて刑死したといふ知らせをお聞きになつたらどのように思はれるでせうか、といふ意味です。

 君は、今死んでも悔いがないほど一生懸命に生きたといふのでせうか。もつと目を開いて、一生懸命勉強して、世の中を良くしていこうといふ高い志はないのでせうか。ないのであれば仕方ありません。しかし、少しでも有るのならば、生き抜く道はあるのではありませんか?そのことをよくよく考へて欲しいと思ひます。

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