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2006年6月10日 (土)

「日本はなぜ敗れるのか~敗因21か条」について  ~その5~  「自由思考」について

 さて、前回の続きである。

 ここで「自由」が出てくる。決して哲学的に持ってまわったものでなく、「自由な談話=フリートーキング」が出来るか否か、が「鍵」だという。

 「先日、あるアメリカ人の記者と話し合った。私は、キッシンジャーが、日本の記者はオフレコの約束を破るからと会見を半ば拒否した事件を話し、これは言論の自由に反することではないか、ときいた。これに対して、彼は次のようなまことに面白い見解を述べた。」(309頁)

 日本の記者が、オフレコの約束を破るというのは、昨日今日始まったことではないという意味でも興味深い証言である。

 山本氏は「取材拒否」は「言論の自由」に反するのではないか、と思ったわけだが、「あるアメリカ人」はそうではない、といい、むしろ「言論の自由」を奪っているのはオフレコの約束を破る日本の記者なのだ、というのだ。その理由を、ややくだくだしいが以下、引用してみる。


 「人間とは自由自在に考える動物である。いや再現なく妄想を述べつづけると言ってもよい。自分の妻の死を願わなかった男性はいない、などともいわれるし、時には「あの課長ブチ殺してやりたい」とか「社長のやつしんじまえ」とか、考えることもあるであろう。
 しかし、絶えずこう考えつづけることは、それ自体に何の社会的責任も生じない。事実、もし人間の頭の中で勝手に描いているさまざまのことがそのまま活字になって自動的に公表されていったら、社会は崩壊してしまうであろう。」(309~310頁)

 「再現なく妄想を述べ続ける」のが「人間」の本性であるという「あるアメリカ人」の観察は面白い。そして「妄想を考えつづけること」自体には「何の社会的責任も生じない」というのも尤もである。人の心の中など、判らない方がお互いの幸せというものである。もし判れば「社会」が「崩壊」してしまうほどの破壊的なインパクトがあるということだが、インターネットの発達はそれに近い状況をつくりつつあるのかも知れない、とも思われてくる。

 「また、ある瞬間の発想、たとえば「あの課長ブチ殺してやりたい」という発想を、何かの方法で頭脳の中から写しとられたら、それはその人にとって非常に迷惑なことであろう。というのは、それは一瞬の妄想であって、次の瞬間、彼自身がそれを否定しているからである。もしこれをとめたらどうなるか、それはもう人間とはいえない存在になってしまう。
 「フリー」という言葉は無償も無責任も意味する。いわば全くの負い目をおわない「自由」なのだから、以上のような「頭の中の勝手な思考と妄想」は自由思考(フリーシンキング)と言ってよいかもしれぬ。いまもし、数人が集まって、自分のこの自由思考をそれぞれ全く「無責任」に出しあって、それをそのままの状態で会話にしてみようではないか、という場合、簡単にいえば、各自の頭脳を一つにして、そこで綜合的自由思考をやってみようとしたらどういう形になるか、言うまでもなくそれが自由な談話であり、これが、それを行う際の基本的な考え方なのである。
 従って、その過程のある一部、たとえば「課長をブチ殺してやりたい」という言葉が出てきたその瞬間に、それを記録し、それを証拠に、「あの男は課長をブチ殺そうとしている」と公表されたら、自由な談話というもの自体が成り立たなくなってしまう。」(310頁)

 自由な思考の途中の断片を勝手に記録し公表する、という行為が自由な談話事態を成り立たなくなせるものである、という指摘はなるほどと思われる。またまた”つくる会に端を発した紛争”に思いが飛ぶが、こうした「自由な談話」を成り立たなくさせる無茶苦茶な場面が余りにも目に付くのに驚かされる。このような場では、最早「本音」の話など出来る筈もない。するとどういうことになるか。

 「とすると、人間の発想は、限られた個人の自由思考に限定されてしまう。それでは、どんなに自由に思考を進められる人がいても、その人は思考的に孤立してしまい社会自体に何ら益することがなくなってしまうであろう。」(311頁)

 正に、この通りになりつつあるのではなかろうか。

 「だからフリー・トーキングをレコードして公表するような行為は絶対にやってはならず、そういうことをやる人間こそ、思考の自由に基づく言論の自由とは何かを、全く理解できない愚者なのだと。」(311頁)
 
 インターネットが出現する以前の文章であるが、インターネットの出現は、一見「自由」が拡大されたかのように見えるにも拘らず、実は「自由思考」そのものを破壊する最大の脅威になり得る、ということではないか、と思われてくる。

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