« こんな事を考えてると頭が痛くなるなあ | トップページ | 写生と反省 »

2006年6月 7日 (水)

「日本はなぜ敗れるのか~敗因21か条~」について  その3 「反省」ということ

 やっと一通り読了した。

 この本の題名「日本はなぜ敗れるのか」が、現在形であることも実に意味深長である。

 戦前・戦中・戦後を、一貫した尺度で見通せる思想的強靭さがなければ、こうした題名で本を書くことは出来ないだろう。これは、ステレオタイプ的に、「戦後は終わった、戦前が始まった」などと言って判ったような気になる無思想とは何の関係もない、寧ろその最も対極に位置するものである。

 山本日本学は、一貫して日本人を突き動かしている原理を探求しているが、この本もその例外ではない。

 軍人のみならず、日本人全体を拘束しているある「力」を浮き上がらせているのだが、それは、現実を無視ないし軽視させ、ある観念を絶対化させて、タブーを作り出すのである。この本では一度も使われていないが、「空気の研究」で語られたことにも通じるように思われる。

 さて、興味深い点は多々あるが、どのようにそれを受け止めていけばよいのかは、また別の問題である。恣意的な読み方をしても余り意味はあるまい。

 とはいっても、自分の今のレベル以上のものを受け取れるはずもなく、自ずからその制約の下の書かざるを得ないということになるが、それはそれとして、自らの受け取り方が絶対ではないということを自覚していれば良いのだろう。

 「反省」ということについて、興味深い指摘がある。第8章は「反省」と題している。この章は珍しく小松氏の引用はない。敗因21か条中の10に「反省力なきこと」という一言だけが述べられている。

 「戦後30年ということで、この8月15日前後は、あらゆる新聞・週刊誌・単行本の「戦争反省もの」の花ざかりであった。そして黙祷もあれば、首相個人の資格による靖国神社参拝と、それへの批判もあった。まさに「一億総反省」的状態である」

 1975年(昭和45年)当時の状況であるが、此の時点からも既に30年が経過しているにも拘らず、日本人がやっていることと言えば相も替わらず、殆ど大同小異のことばかりとの印象が強い。これほどまでに「反省」がなされているのは、敗因10条「反省力なきこと」が克服されたことを意味し、これによって日本は生まれ変わったのである、と、果たして言えるのであろうか。

 もちろん、否である。

 これを、山本氏は「反省という語はあっても反省力なきこと」と痛烈に批判している。そして、是は何も帝国陸軍と戦後の関係だけでなく、西南戦争以来一貫していると指摘している。鬼畜とされる対象は替わっても、その罵る姿だけは一貫している。

 鬼畜西郷軍 → 鬼畜米英 → 鬼畜日本軍

 マスコミによる虚像の捏造は、既に此の頃からある宿痾であることも判る。

 「〔賊兵は〕某神社の境内に〔とらえた七、八人の官兵を〕率き行き、大樹の下に繋ぎしが、…『頭を刎ね、腹を割き、生肝を撮み出しても興なし。何にか面白き趣向は』と耳に口寄せ、私語き、社前に在る銅華表〔銅製の鳥居〕を中頃より二つに切り、そが中に山の如とく炭火を燃き、真赤になりし時、天に叫び地に哭する〔大声で泣く〕生慮を一人一人駆立て、左右より手取り足取り此の火柱を抱かせ、炙り殺したる云々」明治10年9月25日付郵便報知新聞の記事。「空気の研究」より

 こうした「残虐行為」が創作される過程で、「視点の喪失、ブーム化に基づく盲動」が起り、これこそが「日本的欠陥の最たるもの」と指摘している。そして、「それへの反省は未だになされていないのである。」30年後の現在もなされていないといえるだろう。

 ここで、付言しておきたいのは、鬼畜日本軍が鬼畜北朝鮮になっても、その姿が一向に変わっていないのではどうにもならない、ということである。それでは決して左翼を批判することは出来ない。真の反省に基づいた思慮でもない。

 真に「反省」するとはどういうことなのか、山本氏の言は明快である。

 「では一体「反省」とは何なのか。反省しておりますとは、何やら儀式をすることではあるまい。それは過去の事実をそのままに現在の人間に見せることであり、それで十分のはずである。」

 これに、自分なりに付け加えれば、「事実は細部に宿る」のであり、なるべく詳しく、当時のありのままを作為なく記録し、後世の批判に晒すことなのではなかろうか。

 ここでまた、私の思いは「つくる会内紛劇」に飛ぶ。発言している主体が三者あるが、一体真の「反省」に結びつくのは誰なのであろうか。勿論、判断は各人の問題であるが。採択戦の敗戦の総括にも直結するように思われるが、「反省力」なき者にはそれも不可能であろう。



|

« こんな事を考えてると頭が痛くなるなあ | トップページ | 写生と反省 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/86795/10425094

この記事へのトラックバック一覧です: 「日本はなぜ敗れるのか~敗因21か条~」について  その3 「反省」ということ:

« こんな事を考えてると頭が痛くなるなあ | トップページ | 写生と反省 »