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2006年6月13日 (火)

「日本はなぜ敗れるのか ~敗因21か条~」について  ~その7~ 「虜人日記」との対比

「虜人日記」を入手。昭和50年6月30日に第一版が筑摩書房から出版されている。元々は昭和48年にこれを残した小松真一氏が逝去され、奥様の手によって自費出版されたことがきっかけだった。山本書店店主の山本七平氏も自費出版のものを読み、「現代」や「野生時代」という雑誌に、「虜人日記との対話」と題して文章を書いた。これが、「日本はなぜ敗れるのか」となって出版されたわけだ。

戦後30年という一つの区切りの年ということもあって日本の敗因について一つの視点を提供することにもなったのだろう。



「虜人日記」は、日付は特に付されていないが、短い文章が時系列で幾つも並んでいるという体裁になっている。その最後の方に、例の「21か条」が記されているわけだが、山本氏は、その21か条を幾つかのカテゴリーに分類して、それに見合った形で時系列の短文をピックアップして論考を進める、という形を取って書いている。

そして、意外と、引用された文章が少ない、ということに気付く。やはりこれは山本氏の論考が中心であって、「虜人日記」は一つのきっかけだったのだと思われる。「敗因21か条」をきっかけとして、それを敷衍するように考えていくうちに、山本氏の独自の結論に結びついていく、という側面も伺われる。

石油ショックなど、高度成長が一段落する時期に重なり、30年前の敗戦と、戦後の我武者羅に復興に全力を挙げてきたことに対して、一つの反省が生まれた時期であったのかも知れない。その意味では、この著書は、やはり昭和50年という時代の空気から生まれた側面も強く、昭和21年に既に書かれていた「虜人日記」そのものとはまた別のものだということは、確認しておいてよいだろう。

山本氏は、本多勝一が南京虐殺の一挿話として百人斬り競争を取り上げたことに対して、戦争体験者として有り得ないでっち上げであることを完膚なきまでに論破した事でも有名であるが、この著書の中では、なぜ本多勝一的なものが無批判に受け入れられるのか、というところまで考察を進めているところが面白い。

一つ、次の言葉は興味深いものである。
「戦後30年、日本の経済的発展を支えていたものは、面白いことに、軍の発想ときわめて似たものであった。」(198頁)
戦前と戦後を截然と裁断して前者を悪、後者を善として疑わない思考の枠組みは、今では相当に風化してきてはいるが、昭和50年当時はどうであったろうか。敗戦の原因となったと思われる軍の発想が、戦後の経済的発展を支えていたものと極めて似ているというのは実に興味深い。そして、その発想が再び経済敗戦をもたらす可能性をも指摘していた。

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