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2006年1月 9日 (月)

あらためて益なき事は、あらためぬをよしとするなり

あらためて益なき事は、あらためぬをよしとするなり

徒然草の第百二十七段は、この一文だけが記されている。

文章は、必ずしも長ければよいというものではない。徒然草も、短い一文だけの段に印象深い言葉が多い。

小泉内閣が強行しようとしている、「皇室典範」の”改正”は、改めて益なき事であり、あらためぬをよしとするほかはない。アメリカの大統領選挙のやり方も、国を二つに割って大変なエネルギーを費やし多大な弊害もあるが、みだりに改めないのは、国家の中心に関わる問題は軽々に手をつけると「パンドラの箱」を開けたような恐るべきことになりかねないということを、ギリシャ・ローマ以来の政治学の伝統の叡智の上に、感じ取っているからに違いない。

昨年の暮れから、大正時代について勉強してみようと思い、手ごろなテキストになるものを考えて手に取った本として児島襄氏の「平和の失速〜大正時代とシベリア出兵〜」(全8巻)があり、現在3巻まで読了し、4巻目を読んでいるところだが、第一次世界大戦が長引く中、ロシアに二月革命が勃発したところまで読んできた。革命派のボルシェビキは、ロマノフ帝政を打倒したが、当事者たちにとっても思いがけない政体の転覆だった。ロシアの専制君主体制は、それ自体として批判の俎上に上げられることは当然のことだったかもしれないが、その後のレーニンからスターリンに到る粛清の嵐や革命と戦争の輸出による悲惨を考えれば、帝政ロシアの方が遥かにましではなかっただろうか。

もちろん、日本の天皇は、ロマノフ王朝とは違う。また、現存するイギリス、オランダ、スウェーデン、スペインなどの王政の国々とも違う。明治維新から近代国家の建設は、天皇の存在なくしては考えられない。また、敗戦から戦後復興の歩みの中で、天皇が如何に国家の安定軸となったか、計り知れないものがある。

歴史の長さでも、少なくとも1500年以上の歴史を持ち、その源は遠く神話の時代に霞むほど古い。文句なく世界最古の王朝であることは間違いない。長い歴史と伝統の中で、国家の安泰と国民の繁栄を祈ってきたことでも一貫している。政治的中枢であるばかりでなく、文化的な中枢でもあり続けてこられたのが日本の皇室である。

一時代の風潮や、気まぐれな世論が、手を触れてよいものではない。もし検討を要するのだとすれば、まさに国民の叡智を結集して、慎重に取り扱わなければならないだろう。

今国会に改正案を上程するなどというのは、拙速というよりも国民が知らない間にやってしまおうという悪意さえ垣間見えるものだ。

恐るべきことに、共産、社民党は、「天皇制」の廃絶に繋がるこの改正を、今か遅しと待ち焦がれている。旧社会党系の議員も多い民主党も容認する構えだ。公明党は明確な推進派である。つまり、自民党がこの改正案を国家にに提出することを了承してしまえば、事は終わってしまうのである。それほどに事態は切迫している。

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