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2005年8月 8日 (月)

原爆・東京裁判・敗戦の原因

敢えて書きおく。原爆のことである。

原爆死没者の人々とその遺族の方々のこと。

そしてその放射線被害に一生付き纏われた被爆者の人々とその家族の方々のことである。

8月6日、広島への原爆投下から60年が経った。8月9日には、長崎への原爆投下から60年が経過する。

60年前を偲ぶに丁度よい、暑い夏の日々が続いている。

鳥居民氏が、「原爆を投下するまで日本を降伏させるな」という本を先般上梓した。
また、数年前のことだが、諏訪澄氏が、「原爆投下8時15分の意味」という本を世に問うている。

原爆投下を巡っては、日本で一番大きなシェアを持つ中学校歴史教科書が、広島原爆投下について、広島は軍都だったから原爆を投下された、と取られるような記述がなされていた。今回の改訂ではどうなったのか、確認はしていないが、20年ほど前から、「原爆が投下されたのは日本が悪い戦争をしたせいであり、仕方なかった」という率直な感想を、広島の中学生が述べるようになって一時問題になった。最近ではそのようなことは問題にさえならない。

では、日本人の頭上に始めて原爆が投下されたということの意味について、事実を踏まえた研究が何処まで深まっているだろうか。

鳥居氏、諏訪氏の研究は、極めて示唆に富んだものであり、日本がいわば実験台に使われたことが愈々明らかになってきたといえるだろう。

あれから世界は核の時代に突入したのであり、「人類の滅亡」という言葉が単なる観念や想像、宗教上の言葉ではなくて、具体的に有り得る事実として観念される時代の到来である。

核の脅威の時代から、核の脅威が未だない時代のことを考えることは、やや困難があるかもしれない。しかし、核兵器と並び称されるバイオ・ケミカル兵器は、既に第一次世界大戦で登場しているわけで、戦争の枠組みが従来の尺度では測れない恐るべき破壊に満ちたものになったことはそれなりに観念されていたであろう。

原爆投下という大量破壊兵器の使用は、明らかに民間人の無差別殺傷を禁じたジュネーブ条約に違反する大虐殺行為であり、これは当時の国際法に照らして明らかであろう。東京裁判においては、日本側の弁護人が原爆投下を非難した際、突然同時通訳が止められ、議事録からも削除されるという憂き目にあった。そして、東京裁判が戦勝国を裁く場ではなく、戦敗国である日本を裁く場であるということが、改めて確認されたわけである。

つまり、同様の行為であっても、日本が行ったことであれば罪とし、連合国が行ったことは不問に付されるということである。まして、原爆投下は、アメリカ側の一方的な行為である。

あるいはまた、裁判進行中にも、ソ連は、これも違法行為である、シベリア抑留を行い、60万(最近の説では100万)の関東軍将兵らを強制労働に送り込み、そのうちの6万(同じく60万という説もある)がシベリアの土となった。これも、ソ連(ロシア)側の一方的な行為である。

負けたのが悪い、といえばそれまでであるが、負けた原因は、日本が悪かったからである、とするなら、それは事実に目を蔽うことになるだろう。

負けたのは、彼我の国力に圧倒的な差があったからであり、それにもかかわらず戦争に突入せざるを得ないところまで追い詰められるような見通しのない外交や対外行動をしたためである。

また、一方で、戦争には相手があり、相手が一方的に善あるいは悪であるということも有り得ない。

共産主義の化けの皮がまだ有効だった時代に、宣伝戦術やゲリラ戦に長けた共産主義勢力との戦いという側面があった。

複雑極まる情勢の中で国の舵取りに失敗した、とはいえるかも知れない。しかし、嵐の中にあって船の舵取りを失敗したからといって、その責任を何処まで追及できるものか、国内の内部分裂の様相も預かって力があったと言えるだろう。

単純な問題ではないのである。それは分りきっていることであるのに、その複雑さに耐えられずに、日本が悪かった、で済ませてしまうのは思考停止以外の何者でもない。

日本は焦土と化した。広島・長崎の原爆の被害はその象徴であった。広島20万、長崎15万、東京20万、そのほか空襲にあって焼かれた地方都市は100にも登る。60万とも言われる犠牲者が出たといわれるが、こう見るとやはり広島、長崎、東京に集中しているということになる。犠牲者数が一体どれほどの数に登ったのか、原爆死没者だけでなく、国全体としての統計をまとめられないものか。外地での犠牲者についても可能な限りまとめられないものだろうか。

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