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2005年6月18日 (土)

『全「歴史教科書」を徹底検証する』を読んで

「2006年度版教科書改善白書」として出されたこの本を読了しました。

しかし、よくもまあここまで綿密に、読み込んで分析したものだと、感動しました。

題の通り、「歴史教科書」についての分析が中心ですが、「公民教科書比較」は、昭和20年代から現在にまでの教科書記述内容の傾向について、その移り変わり具合を抉り出しています。

「歴史教科書」もボロボロですが、「公民教科書」の無残さも、目を覆わんばかりだということが分りました。

「中学校公民教科書の否定的な特徴」として、6つ挙げています。

1、国家と愛国心について教えない。

2、象徴天皇について極めて軽い扱いしかしない。

3、国民主権を国民自らが政治を行う意味で捉え、直接民主主義を理想的な政治制度となし、間接民主主義、代議制民主主義の積極的意義を教育していない。

4、日本国家の重要な機関である自衛隊を肯定しない。

5、「人権」は「侵すことのできない権利」であるということを強調する余り、「公共の福祉」による権利制限の問題や義務の問題を軽く扱い、社会の中における指導・被指導関係、保護・被保護関係を教えない。

6、明治憲法は天皇制絶対主義の非立憲的な憲法であり、帝国議会は「日本国憲法」の安を自由に審議し、修正したと歴史の歪曲を行っている。

この6つの特徴は、昭和20年代から平成18年度使用教科書まで一貫して受け継がれている、と指摘されています。


そこで、次の5点に着目して分析を行っています。

1、諸外国のどれを政治的モデルとしているか。

2、国家や政治権力についてどう記述しているか。

3、「日本国憲法」をめぐる解釈はどうか。

4、諸外国と日本の関係をどう記述しているか。

5、宗教、家族その他についてどう扱っているか。


また、昭和20年から平成18年までを4つに区切ってその特徴を指摘しています。

第一期(昭和20年代〜昭和36年度) 国家と歴史の解体

第二期(昭和37年〜昭和52年度) 国家と歴史の再建の試み

第三期(昭和53年度以降) 社会と国家の解体

第四期(平成5年度以降) 反日全体主義の教科書


具体的な内容については、同書を読んで頂きたいと思いますが、「国家」の定義も行わない、「天皇」については小見出しさえつけない教科書が「公民」として罷り通っている現状には、唖然とするほかはありません。学習指導要領無視は、歴史以上だと思いました。

日本国民の一員である自覚と責任を教えるのが公民の役割であるとすれば、先ずは、「日本国家」とは何か、についてきちんと教える必要があります。ところが、「日本」も「国家」も、教科書の中にない。これを「欠陥」と言わずして何といえばいいのか、言葉を失います。

総括的な評価として、「全体主義的傾向から免れているか」「非国家の思想で書かれていないか」「歴史偽造と反日主義の傾向から脱却できているか」の3点でまとめていますが、その3点ともに評価されているのは「扶桑社」の教科書であり、次に評価できるのは「大阪書籍」「清水書院」であるとしています。そして、残りの5社のうち日本文教出版以外の4社については学習指導要領遵守という点でも問題があり、特に日本書籍新社に至っては、意識的に全体主義傾向、非国家の思想、歪曲した歴史認識と反日主義の傾向を守ろうとしているようだ、と判定を下しています。

同じ「学習指導要領」の下で書かれ、検定を通った教科書であっても、これほどの違いがあることを、改めて認識させられました。

単に教科書を比較するというだけでなく、日本の子供たちに、この日本をどのように語り伝えていけばよいのかを考えさせられる、格好のテキストのように思います。

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コメント

バッハ先生、現場の第一線で戦っている先生こそ、国の宝だと思います。
「現場を死守する」こと、「一所懸命」の思想、これは百姓から武士に至る日本人の根っ子にある生き方ではないでしょうか。

幕末の志士、吉田松陰先生は「己の地より見を起こせ」と諭されました。

今あるところから、空想に走ることなく、今、自分には国のために何が出来るのかを考え、実践することが何よりも大切なことだと思います。

外野からではありますが、お力になれることがありましたら、協力しますので、どうぞご連絡下さい。またブログにお邪魔させていただきます。現場の情報をどんどんお教え下さい。

投稿: 橘 正史 | 2005年6月20日 (月) 午後 11時10分

橘 正史さんへ
TBに対するご丁寧なコメントに心から感謝申し上げます。
しかも、詳細な資料内容と激励にも感激致しました。私の付け焼き刃的な知識と違い、豊富な知識の貴方に応援頂くのは何とも心強い限りです(ホッ!)。
もう、自分の教科だけを教えていればよいという限界を越えたと思い、何とか抵抗しようとしている所です。前回の2003年度版教科書改善白書は小学館文庫で読んでおりました。国民の油断も改訂版が出ているのですね。私もとにかくついて行けるように読んでみます。ご指導有り難うございました!

投稿: Bach | 2005年6月19日 (日) 午後 09時21分

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朝日新聞1面連載の「戦争をどう教えるか」で日本、中国、韓国の各国の歴史教科書の記述の違いについて比較していた。 驚くべきことは中国、韓国に比べて、日本の教科書における満州事変から敗戦までの記述の少なさである。ひどいものでは200ページ中わずか10ページ。この時期は中国、韓国を侵略していた時期であり、それを教えられることなく日本人は成長していく。 かたや、中国、韓国では歴史教科書の半分のページが近代にさかれてい�... [続きを読む]

受信: 2005年6月19日 (日) 午前 01時29分

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