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2010/12/05

言霊の幸はふ国  山上憶良

万葉集 巻五
    山上憶良頓首謹みて上る。
   好去好来の歌一首、反歌二首

神代(かみよ)より 言い傳(つ)て来らく そらみつ 倭(やまと)の国は 皇神(すめかみ)の 厳(いつか)しき国 言霊の 幸(さき)はふ国と 語り継(つ)ぎ 言い継(つ)かひけり 今の世の 人もことごと 目の前に 見たり知りたり 人多(さは)に 満ちてはあれども 高光る 日の朝廷(みかど) 神(かむ)ながら 愛(めで)の盛(さか)りに 天(あめ)の下(した) 奏(まを)し給(たま)ひし 家の子と 選び給ひて 勅旨(おおみこと) 戴(いただ)き持ちて 唐(もろこし)の 遠き境に 遣はされ 罷(まか)りいませ 海原(うなばら)の 邊(へ)にも沖にも 神留(かむづま)り 領(うしは)きいます 諸(もろもろ)の 大御神等 船舳(ふなのへ)に 導き申(まを)し 天地の 大御神たち 倭の 大国霊(おほくにたま) ひさかたの 天の御虚(みそら)ゆ 天(あま)がけり 見渡し給ひ 事了(をは)り 還らむ日には また更(さら)に 大御神たち 船(ふな)の舳(へ)に 御手打ち懸けて 墨縄(すみなは)を 延(は)へたるごとく あちかをし 値嘉(ちか)の岬(さき)より 大伴の 御津の濱びに 直泊(ただはて)に 御船泊(みふねは)てむ つつみなく 幸(さき)くいまして 早帰りませ


 この歌を思ふと、心にひたひたと湧き出てくるものを感ずる。

 何といふ、心のこもつた言葉であらうか。

 遠き異国へ、公の使命を帯びて旅立つ人への、祈りである。

 単なる惜別の情ではない。国家の重き任務を負ふて旅立つ人への餞の言葉なのだ。

 飛鳥維新の時代の息吹を送る人も送られる人も共に呼吸してゐた。

 「言霊の幸(さき)はふ国」とは、何といふ美しい言葉だらうか。

 この言葉を残してくれた山上憶良といふ人物を、限りなく懐かしく思ふ。

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